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資料展示「絵の中にみる読書する女性たち」

資料展示「絵の中にみる読書する女性たち」の様子です。

公開日:2016年10月7日

平成28年10月27日(木曜日)から11月9日(水曜日)は第70回読書週間です。第1回読書週間は、戦後間もない昭和22年(1947年)11月17日から23日までの1週間、日本図書館協会の主催により開催されました。

私たちが普段何気なく楽しんでいる読書も、少し歴史をさかのぼってみると、今とは違ったありようがうかがえます。

今回はヨーロッパと日本を中心に、その場所、その時代の読書風景を、「絵の中にみる読書する女性たち」として展示紹介します。

 

場所:山口県立山口図書館 2F展示コーナー

期間:平成28年10月1日(土曜日)~11月29日(火曜日)

絵画・展示資料の紹介

《聖母の聖務日課 受胎告知》

作者:ナルボンヌの祭壇飾布の画家、制作年:15世紀、所蔵:フランス国立図書館

展示資料:『ベリー公のいとも美しき時禱書』(岩波書店,2002年)

フランスの王侯貴族ベリー公が作らせた時祷書の中に描かれた「受胎告知」の場面です。この時祷書は、中世末期の彩色写本の中でもひときは美しく大判で、分冊・焼失など数奇な運命をたどり、現在パリのフランス国立図書館とトリノ市立美術館に分冊所蔵されています。
聖務日課書に従って聖職者が定時課を唱えるのに習い、中世には聖務日課書を簡略化した個人的な時祷書が一般に求められるようになり、貴族や裕福な人々は豪華な時祷書を製作させました。
絵の中には、書見台を挟んでマリアと大天使ガブリエルが描かれています。図像研究によると、本を読む女性の構図として、最も古く、また最も多く描かれているのは聖母マリアといわれています。

 

《美人読書図》

作者:鳥居清信、制作年:享保年間(1716~36年)前期頃、所蔵:ボストン美術館

鳥居派の祖である鳥居清信は歌舞伎の役者絵で知られていますが、同時に美人画や武者絵においても素朴でおおらかな作品を残しています。
「美人読書図」では縁側に腰掛けた美女が悠然と読書をしている姿が描かれています。立膝姿で膝に本を置くポーズは菱川師宣が創始と考えられ、優美な姿として広く取り入れられるようになりました。
女性が読書をする姿は、江戸時代の女訓用往来物の挿絵にも多く見られます。書箱に本を収納していたり、床の間に本を置いている様子が描かれており、当時の女性たちが読書に親しみ、蔵書を持っていたことがうかがえます。
 

展示資料:『ボストン美術館肉筆浮世絵 第2巻』(辻/惟雄‖監修,講談社,2000年)

『江戸時代女性生活絵図大事典 4』(大空社,1993年)

 

《読書する女》

作者:ジャン・オノレ・フラゴナール、制作年:1776年頃、所蔵:ワシントン・ナショナル・ギャラリー

展示資料:『カンヴァス世界の大画家 20』(井上 靖∥編集委員 高階秀爾∥編集委員,中央公論社,1983年)

18世紀フランスのロココ美術を代表する画家、フラゴナールの作品です。モデルは不明とされていますが、読書をテーマとした作品として広く知られています。
彼女の着ているドレスの黄と、効果的に使用されている赤の色調の暖かさで人間の温もりを表現しており、自然な光の中で「本を読む」という日常的な情景を描いています。
その後に起こったフランス革命からナポレオン帝政に伴い、ロココ美術は退廃的とされて衰退し、フラゴナールも晩年は不遇でしたが、彼の死後に美術評論家のゴンクール兄弟がフラゴナール論を執筆したことで、再評価されました。

 

《婦女風俗十二ヶ月図 五月 蛍火》

作者:勝川春章、制作年:天明3年(1783年)頃、所蔵:MOA美術館

展示資料:『浮世絵大系 3 春章』(集英社,1985年)

浮世絵の肉筆画系の中興の祖と言われる勝川春章の傑作のひとつで、「絹本著色風俗十二月」として国の重要文化財に指定されています。当初は12幅あったといわれている作品ですが、1月と3月が失われ、後に散逸した2幅を歌川国芳が描き足しましたが、その1幅も現在は失われてしまいました。
縦長の構図に、季節ごとの風俗や調度が描かれ、それぞれの行事を楽しむ江戸の女性たちの優雅な姿に、天明期を代表する春章の精緻な筆使いがみられます。5月の絵「蛍火」には、足を崩して読書する美人、その横から蛍かごを近づけて本を覗き見る美人などが描かれ、江戸風情と共に、当時の女性たちと読書の関わりを感じさせる作品です。

 

《読書する少女》

作者:ピエール=オーギュスト・ルノワール、制作年:1874年、所蔵:オルセー美術館

展示資料:『現代世界の美術 2 アート・ギャラリー』(中山公男[ほか]編集委員,集英社,1985年)

19世紀のヨーロッパでは、新聞や雑誌、娯楽小説が流行し、一般の労働者、女性や子どもが読書をする光景は珍しいものではなくなりました。特に女性の読書風景は当時の多くの画家に好まれたようで、読書に親しむ女性たちの姿がさまざまに描かれています。
ルノワールの作品にも読書をテーマにした作品がいくつかあり、「読書する少女」のほか、画家のクロード・モネやその夫人をモデルにした作品、読書する女性を背後から描いた作品などもあります。

 

《読書》

作者:黒田清輝、制作年:1890~91年、所蔵:東京国立美術館

展示資料:『原色日本の美術27 近代の洋画』(小学館,1978年)

1891年のフランス芸術家協会のサロンに出品され、日本人としては3人目の入選作品となった、黒田清輝の初期代表作です。この絵は当時制作の拠点としていた、パリ近郊のグレー・シュル・ロワン村のホテルの一室において、村の農家の娘、マリア・ビヨーをモデルにして制作されました。
黒田清輝は当初、戸外での作品を手がけていましたが、連日の雨により、室内での作品制作をすることになりました。そこで室内の題材として選ばれたのが、この読書図です。作品が描かれた19世紀以降、読書は女性の趣味のひとつとなり、女性読者を対象とした小説や実用書などが、多く流通するようになっていました。

 

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