「異国への憧憬 昔の外国情報誌」
−月間資料展示「北欧の文化を探る」によせて−
蔵出し資料展《温故知新》
県立図書館の書庫には100年の蓄積で、およそ60万冊の資料があります。「蔵出し資料展」は県民の財産であるこれらの資料をいろいろなテーマによってお見せする展示です。
四方を海で囲まれた日本は、古代より海流に乗って外国の文化や情報が入ってきました。
古くは、遣唐使や中国への留学僧、貿易商人等が外国の情報を持ち帰ることで情報を得ていました。
江戸時代になると、鎖国政策の中でも外国の情報を幕府が入手するシステムがあり、「オランダ風説書」「唐船風説書」など長崎に入港する外国船が奉行所を通じて海外情報を江戸幕府に提出しました。この他、朝鮮通信史やオランダ商館長江戸参府、琉球使節の江戸参府など江戸までの移動の間に外国の人と地域の人々の交流もあり、庶民の中にも外国の風習に対する関心が高まっていたと思われます。この時代の出版物の中には他国の紹介をしたものがあります。
特に、開国か攘夷かと揺れる幕末の日本では、外国の情報を切実に求められたことでしょう。
今回は、江戸時代から明治初期に出版された、海外の情報を伝える資料を紹介します。
(2007年5月17日作成)
『華夷通商考』で見るスウェーデン
当館の5月月間資料展示「北欧の文化を探る」によせて昔の外国情報誌から北欧のスウェーデンの情報を探しましょう。
『華夷通商考』とは西川如見の著した外国地誌および商業貿易書。当館所蔵の宝永5年『増補華夷通商考』から明治32年(1899)の再版本、さらに漫画版を紹介します。
また、時代が下りますが、19世紀のタリスの地図や明治4年(1871)からの岩倉使節団報告書『米欧回覧実記』で紹介されたスウェーデンの記事も紹介します。
| 書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
|---|---|---|---|---|
| 華夷通商考 | 西川 如見 | R290 | ||
| 華夷通商考 全五卷 | 西川 如見 | 求林堂 | 1899年5月 | 292.201−C 9 |
| 江戸の世界聞見録(ゼオガラヒー) | 西川 如見‖原著 | 蝸牛社 | 1995年6月 | 290.9−M5 |
| 特命全権大使米欧回覧実記 第4編 | 久米 邦武‖編修 | 博聞社 | 1878年1月 | 290.9−A |
| ジョン・タリスの世界地図 | モンゴメリー・マーティン編 | 同朋舎出版 | 1992年5月 | Q290.38-M2 |
中国文化への知識欲
江戸中期には、中国熱が高まり、寛政、文化期に中国の現況を記した書物が日本人の手によって作られ、出版されました。それは、『清俗紀聞』(寛政11年〈1799年〉中川忠英監修)と『唐土名勝図絵』(文化3年〈1806年〉岡田玉山編述)です。
このうち、『唐土名勝図絵』は画家岡田玉山を編述者として作られた北京とその周辺の地誌。当館所蔵の1806年刊のものと1987年の複製版を紹介します。
| 書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
|---|---|---|---|---|
| 唐土名勝図會 卷之1〜6 | 岡田 玉山‖〔他〕編述 | 書肆浅文貫 | 1806年3月 | R292.2−A |
| 唐土名勝図絵 複製版 全六巻 | 岡田玉山編述 | ペリカン社 | 1987年5月 | R292.202-L7 |
幕末の世界地誌『坤輿図識』と軍事地理書『三国通覧図説』
『坤輿図識』の著者は、箕作省吾。体系的に諸国の領界や人員、習俗、物産などを紹介している。当時ベストセラーとなり、諸侯や幕閣、吉田松陰や桂太郎などの志士も熟読したと言われています。
『三国通覧図説』は林子平の著。天明6年(1786)刊行。内容は、日本の隣境の朝鮮、琉球、蝦夷地と無人島(小笠原諸島)です。寛政4年(1792)に林子平が幕政批判で処罰された時絶版になりましたが、この本は外国に出て1832年パリで出版されました。シーボルトの文献の中に本書の蝦夷地の部分を蘭訳したものが発見されています。
| 書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
|---|---|---|---|---|
| 坤輿図識 天、地、人 | 箕作 省吾 | 和泉屋善兵衛〔等〕 | 1847年11月 | R290−A |
| 三国通覧図説 全 | 林 子平‖述 | 須原屋市兵衛 | R292−A |
明治時代の地理の教科書
『輿地誌略』は明治初期の地理教科書。内田正雄・西村茂樹纂輯。明治3年〜10年刊。内田が幕末のオランダ留学中に蒐集した世界各地の写真を模写し、挿図として収録し、当時としては『西洋事情』や『西国立志編』に並ぶベストセラーとなりました。各府県で数千部単位で印刷し、教科書に使われました。
『小学暗誦萬国歌盡』は明治10年刊行された地理学初歩入門書。國の名前や大きさ、人口などを七五調で説明、暗記しやすい構成になっています。
『地理全誌』は、幕末の漢籍世界地理書。英国人中国伝道師ウィリアム・ミュアヘッド(慕維廉)著。1853・1854年上海刊。 安政元年(1854)禁書を解かれてすぐ輸入され、同5・6年刊行しました。当時の漢籍地理書中、最も総合的で、維新後も全国的に中学教科書として流布、邦訳もされました。
| 書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
|---|---|---|---|---|
| 輿地誌略 卷之六 | 内田 正雄‖纂輯 | 山梨県 | 1874年3月 | R290.1−A |
| 小学暗誦萬国歌盡 | 加藤 熈 | 1877年4月 | R290.1−A | |
| 地理全志 上篇 第一〜五冊 | 慕維廉‖著 | 爽快樓 | 1859年 | R290.1−A |
| 地理全志 下編 第三〜五冊 | 慕維廉‖輯訳 | 爽快樓 | 1859年 | R290.1−A |
参考文献
| 書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
|---|---|---|---|---|
| 国史大辞典 | 吉川弘文館 | 1979〜1997年 | R210.03−K9 | |
| 日本史文献解題辞典 | 加藤/友康‖編 | 吉川弘文館 | 2000年5月 | R210.03−N0 |
| 幕末日本の情報活動 | 岩下/哲典‖著 | 雄山閣出版 | 2000年1月 | R215.9−N0 |
| 予告されていたペリー来航と幕末情報戦争 | 岩下/哲典‖著 | 洋泉社 | 2006年5月 | R215.8−N6 |
見出し下の解説は、国史大辞典や日本史文献解題辞典を参考にしました。