マイ・ベスト・ブック 〜この本、おすすめ!〜
No.4 (2007.6)

山口県立山口図書館 新刊児童書研究会編集 
山口県立山口図書館 子ども読書支援センター発行 (隔月発行予定) 
TEL:083-924-2111   FAX:083-932-2817  
              

  このブックリストは、新刊児童書研究会メンバーが推薦する本のブックリストです。子ども読書活動推進にお役立てください。

 <絵本>
 いかりのギョーザ    苅田澄子文 大島妙子絵 佼成出版社 2006.12    
   こぶたのブブコさんが出会ったフライパンは、電気でもガスでもない“いかりの火”でギョーザを焼きあげる“いかりのフライパン”。「『プンプーン!プーリプリ!!』という大きなかけ声を出してしあげるいかりのギョーザは世界一のおいしさです。」とあるように、本当に食べたくてたまらなくなってきます。
 おしゃべりするフライパンという設定は、小出保子さんの本『おなべおなべにえたかな?』 を思い出させてくれます。どちらもラストのセリフがつぶやくようなひと言になっていて心が温かくなってきます。 (M.I)
 ぞうのオリバー      シド・ホフ作  三原泉訳  偕成社 2007.1
    サーカスに入るためにふねにのってやってきたオリバー。でも、注文のまちがいなのかサーカスだんには入れてもらえませんでした。まちで自分の居場所を探しますが、なかなか見つかりません。小さめのサイズの本にオリバーの姿がいっぱいに描かれていています。
 いろいろなところでことわられても、笑顔で前向きなオリバーがかわいらしい。 (M.S)
 ぽんぽん ポコポコ     長谷川義史作  金の星社  2007.1
 「ぽんぽん」「ぽんぽん ポコポコ」の繰り返しが楽しい。場面に合わせてリズムをつけたり、読むスピードや大きさを変えると子供たちは喜ぶ。調子のよい言葉と温かみのある絵がぴったり調和している。(ネコの毛が青いのには、子供は少し違和感があるようだったが…) (N.Y)
 ようちえんっていうところ   ジェシカ・ハーパー作 ブライアン・カラス絵  石津ちひろ訳 BL出版 2007.2
 温かい色使いと優しいタッチの絵にとてもひかれます。3歳の息子がとても静かに最後まで絵に見入り、話に耳を傾けていて、ラストの「あしたのおたのしみさ。」のセリフにニコーっとしていました。今までにない穏やかな表情を見せてくれたのが印象的でした。
 動物たちにトミーが食べさせるエサは、馬にりんご、羊にビスケット、めんどりにとうもろこし、めうしにたんぽぽと不自然さもないのに、ちゃんと幼稚園で習うであろうABCDになっているところに日本人の私はラストで気づかされ、もうお気に入りになりました。 (M.I)
 <小学生向き読み物>
 ふしぎメッセンジャーQ  ぼくのあぶないアルバイト 
                  斉藤洋作 大平けーすけ絵 ポプラ社 2007.3
     小学生の勇(ユウ−U)と、中学生の恵子(ケイコ−K子)は、「メッセンジャーQ」という名前でツカイッパのアルバイトを始める。最初の仕事は、親の離婚で飼い犬と一緒に住めなくなった女の子のために犬の写真を撮ってくること。文章と、時々マンガのようにコマ割りされる挿絵が違和感なくつながっている。探偵、幽霊、謎の美少女、色々つまった楽しいお話。離婚した家族や、携帯電話・パソコンを使いこなす子供たちが、読み物の中にも当たり前に出てくるようになったなぁ。 (M.S)
 ヘブンショップ    デボラ・エリス作  さくまゆみこ訳 すずき出版 2006.4
     アフリカ南部、マラウイに住む13歳の女の子が主人公。エイズが猛威をふるうアフリカでビンディの母と父もエイズで亡くなる。エイズの偏見ゆえ婚約を破棄される姉。今までの生活をすべて失い非情な親戚にひきとられ2人の過酷な生活が始まる。苦しい状況の中で懸命に生きる子供たち。常に死者を敬い、仕事や人生に誠実だった父さんに導かれて、最後はひとつのユートピアのような世界が創り出されていくのだが…。心に残る作品です。 (S.M)
 <ティーンズ(中・高生)向き 読み物>
 ウォーリアーズ 1 (ファイアポー野生にかえる)   エリン・ハンター作  金原瑞人訳 小峰書店  2006.11 
  人間(二本足と表現される)に飼われていた子猫ラスティーが本能に目覚め、野性の猫として力強く成長していく物語。友情や裏切り、愛や憎しみ、細かい心の描写がとてもリアルで、思わず息を飲むようにして読み進んでしまうすごい作品。2006年度翻訳もののファンタジーでは、マイ・ベスト・ブック。小学校高学年から大人まで楽しめ、米国ではすでに18巻出版されているベストセラーです。日本では6巻シリーズで出る予定です。1巻目からハラハラドキドキする猫の世界を是非あなたの目で確かめてみてください。 (U.K)
 その角を曲がれば    濱野京子作 講談社 2007.2     
  クラスメイトに受け止められている自分と、自分自身で感じている自分の姿のギャップを、どう整理していけばよいか悩む主人公に、自分を重ね合わせて読み進めることができる。激しくぶつかりあうことなく「ずれ」をカバーしながら付き合っていく部分は少し物足りない気もするが、その方が若い読者には入りやすいのかもしれない。 (N.Y)
 NHK中学生日記1  誰にも言えない 〜 サバイバー 
               さい ふうめい作 浅野なお漫画  NHK出版  2007.3  
  言葉による性的いやがらせを含めると、男子の4人に1人が性的被害を受けたことがあるそうです。万引き=窃盗、カツアゲ=恐喝であるように、からかいやふざけ合い、いたずらが性暴力につながっているという認識を皆が持つべきではないでしょうか。被害者の性別が女であろうと男であろうと、疑ったり責めたりせず、支えになろうとする人が一人でも多くなるといい。 (M.S)
 <ノンフィクション>
 川の王さま オオサンショウウオ     広島市安佐動物公園  新日本出版  2007.1
 生態が謎だらけのオオサンショウウオについて研究を重ね、ついに人工巣穴での繁殖に成功した安佐動物公園の取り組みが、わかりやすくまとめてある。オオサンショウウオの生態だけでなく、生息環境の悪化、それに対して何をしていくべきか等、社会的視点からも書かれてあり、幅広くいろいろなことを考えていける本。 (N.Y)
 <研究書>
 物語の役割 (ちくまプリマー新書)    小川洋子著 筑摩書房  2007.2    
 『博士の愛した数式』 の小川洋子さんの講演集。第2部「物語が生まれる現場」が特に興味深い。物語が生まれる一番初めはイメージ。言葉は常に後から遅れてやってくる。テーマもストーリーも最初から存在していない。びっくりするような内容が続く。「言葉にできないものを書いているのが小説」という小川さん。彼女の本のなんとも言えない雰囲気、読後の余韻は、ここからきているのかと納得の1冊でした。 (S.M)

  
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