マイ・ベスト・ブック 〜この本、おすすめ!〜
No.9(2009年3月)
山口県立山口図書館 新刊児童書研究会編集
山口県立山口図書館 山口県子ども読書支援センター発行
TEL:083-924-2111 FAX:083-932-2817
山口県立山口図書館 山口県子ども読書支援センター発行
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この「マイ・ベスト・ブック」は、新刊児童書研究会のメンバーが推薦する本のリストです。子ども読書推進活動などにお役立てください。
<小学生向き読み物>
- 『トゥープゥートゥーのすむエリー星』 茂木健一郎 著 毎日新聞社 2008年5月
- 最近話題の脳科学者である茂木健一郎さんが23歳の時に書いたSF作品。未来の地球は地球全体がビルディングになっていて、自然の緑や土などは全くなくなっています。銀河系の中心部にエリー星というジャングルだらけの惑星があり、そこで発見された宇宙生物トゥープゥートゥと主人公のまさお君たちが冒険に行く、という物語です。ノーベル化学賞の田中耕一さんが少年時代愛読した事で有名になった小松左京の『空中都市008』と同じ雰囲気を感じさせる作品。小学校低学年から大人まで楽しめる、夢のある話です。
- 『魔法の森1 囚われちゃったお姫さま』 パトリシア・C・リーデ 著 東京創元社 2008年6月
- 全4巻の魔法の森シリーズの第1巻。軽快でコミカル、いろいろなお姫様の昔話も織り込まれていて、楽しく読めます。小学校高学年くらいからの女の子好みの読み物かも。お姫様らしくするのが大嫌いなお姫さまシモリーンは、隣国のハンサムな王子と危うく結婚させられそうになり、ドラゴンの押しかけ‘囚われの姫‘になりますが、そのドラゴンのカズールがとても人間味のある素敵なドラゴンだし、他の登場人物も個性があって面白い物語です。(E.Y)
<ティーンズ(中・高生)向き読み物>
- 『メジルシ』 草野たき 作 講談社 2008年5月
- ストーリーは、中学生の双葉と離婚する両親とが「最初で最後の家族旅行」に北海道へ行く、という展開で、3人の関係と感情がたんたんと描かれています。特に母親と娘の関係と感情の描写は「分かるな」と考えさせられました。母親と娘の関係は難しい。というのも、自分と母親の関係がそのまま娘の関係に影響するから。是非、女子中学生、高校生に読んでもらいたいし、娘を持つ母親にも読んでもらいたい作品です。(E.Y)
- 『睡蓮の池―ステフィとネッリの物語―』 アニカ・トール 作 菱木晃子 訳 新宿書房 2008年5月
- 第1巻の「海の家」は、ナチス・ドイツに迫害され、スウェーデンの「この世の果て」とも思えた寂しい小島に送られたユダヤ人姉妹ステフィとネッリの、養父母のもとでの最初の1年間を描いていますが、この第2巻では、周囲の人に支えられてイェーテボリの女子中学校に進学したステフィの生活が描かれています。歴史的な背景ともなっているユダヤ人の悲劇・・・でも、その中でステフィは、周囲に支えられ、明るく前向きに生きています。ユダヤ人の話は悲劇が多く、読んでいて暗くなる事が多いけれど、この話は救われる思いがする展開です。離れ離れになったままのステフィの両親の置かれた境遇は悪化していきますが、はたして最後の悲劇を避けることができたのかどうか?次回作が楽しみな作品であり、『アンネの日記』『ハンナのかばん』などのユダヤ人の少女たちが主人公の本と共に読んでほしい本です。(E.Y)
- 『ずっと、そこにいるよ。』 早見裕司 作 理論社 2008年6月
- 「生きている『人』とそうでないすべての『人』と、そのどちらにも、同じ礼儀と優しさと、たぶん―ためらいをもって接する事ができるのが季里なのだ。」この文章で、一気にこの本の住民になる事ができます。スピリチュアル・カウンセラーの類ではない事が妙にうれしくて、心にすとんと落ちてきます。自分もまた、主人公の季里を見守る一人でありたいと思える本です。(M.I)
- 『人くい鬼モーリス』 松尾由美 著 理論社 2008年6月
- 人くい鬼(人食い鬼ではない)の「モーリス」という名前は、モーリス・センダックの絵本『かいじゅうたちのいるところ』からとられていて、センダックのかいじゅうのように、見た目は怖いけれどユーモラスで愛嬌があります。私こと高校生の村尾信乃はアルバイトで小学生の芽理沙という名の超美少女の家庭教師をすることになります。その静かな別荘地でおそろしい事件が立て続けに起こります。人くい鬼の存在を知らない大人たちの推理と、その存在を前提に繰り広げる少女たちの推理が面白く、また、ラストは少女たちと人くい鬼の不思議な心の交流があって、読後はさわやかな感じが残ります。飽きさせないで一気に読める本です。(E.Y)
- 『ミラート年代記1』 ラルフ・イーザウ 著 あすなろ書房 2008年7月
- 人間を父に、古の民シリウムを母に持つ二人の王子エルギルとウィクスの冒険物語。物語は、父王を伯父ウィンカデルの謀反によって殺され、城から落ち延びた双子の王子が12歳になったところからはじまります。ラルフ・イザーウが好きな人、またファンタジーが好きな人にはお薦め。読み始めたら最後まで一気に読めてしまいます。3部作の1巻なので今後の展開がとても楽しみです。(E.Y)
- 『H.I.V.E(ハイブ) 悪のエリート養成機関1』 マーク・ウォールディン著 ほるぷ出版 2008.6
- 南海の孤島にある極秘の悪人養成機関HIVI。生まれつき白い髪の超人的な頭脳を持つ孤児の少年オットーは、無理やりHIVIに入学させられたが、自由のないHIVIを嫌い、ウィング、ローラ、シェルビーと共にそれぞれの特技を生かして脱出を試みる。不可能に思われる脱出が果たして成功するのか、最後までスリルあって一気に読んでしまう。続編もこれから出るそうで、楽しみである。小学生から読んで楽しめる。(E.Y)
- 『女子の国はいつも内戦(14歳の世渡り術)』 辛酸なめ子 作 河出書新社 2008年3月
- 幼稚園の時代から大人になっても、女の子の世界には必ずグループができ、ヒエラルキーが生まれる。グループごとの特色や処世術など、女子の時代を生きぬいた著者の、ちょっとヒネた分析がおもしろい。この本を読んで、派手系グループで一目置かれるもよし、割り切って無難に過ごすもよし。(M.S)
- 『この子を救えるのは、わたしかもしれない』 ワールド・ビジョン・ジャパン 編 小学館 2008年3月
- 大人たちの争いや欲望の犠牲になって、売春婦や兵士にされた子ども。貧しさや戦争のために常に身の危険にさらされている子ども。世界には様々な問題があって、苦しんでいる子どもたちがたくさんいるということ、日本人にとっては大金とはいえないくらいのお金でも、大きな援助になることがわかる本です。(M.S)
- 『大人になる前に身につけてほしいこと』 坂東真理子 著 PHP研究社 2008年6月
- 昭和女子大の学長でもあり、ベストセラー『女性の品格』の著書の、学生や若い人に向けた生き方・考え方のエッセイ集。当然だが、内容的には『女性の品格』と重なる部分が多い。でも、自分が中学生や高校生の時にはきずかなかったけれど、今になってみると本当は皓だったな、という、大人になる前に身につかる事で、人生の可能性が広がる具体的内容がいっぱい。しかも、すっきりとわかりやすい文章で書かれていて、とても読みやすい。最初から全部を読み通さなくても、50の話の見出しを見て気になるところから読み始めることができるので、是非中高生に読んでほしい。大人でも」なるほどと思えることがたくさんあると思う。(E.Y)
<ノンフィクション>
- 『今森光彦の魅せる切り紙』 今森光彦 作 山と渓谷社 2008年8月
- 大変楽しい本に思えました。まさに幼児から大人まで楽しめます。それは、幼児でも簡単に作ることができるし、大人が複雑に作ることもできるからです。知能の発達に従いながら、また、努力の積み重ねによっていろいろ工夫すれば、どんどんおもしろいものが作れます。私たちが生活している身近な動物、植物については、左右対称になっているものが大変多い事に、この本によって気づかされます。木や草花の葉っぱ一つとっても、左右対称の多くの型をしたものがあるのに驚きます。またこれらの切り紙をネックレスや栞などに使ってみるのも楽しいと思います。(タイトルが少し固いように思いました。)(A.N)
以上です。