公開日:2011年9月15日、更新日:2011年11月24日
「ふるさと文学体験学習会」の模様を紹介します。
この事業は、2011年9月8日(木曜日)の県立青嶺高等学校を皮切りに、県内各地の小・中・県立学校各2校ずつの計6校を対象として開催するものです。
講師は県内在住の作家の方をはじめ、各界で御活躍中の山口の文学にゆかりの方々で、自らの読書体験や半生、山口の文学などについて語っていただきます。
9月8日(木)は下関市在住の作家、田中慎弥さんをお迎えし、県立青嶺高等学校で行いました。田中さんは、自身の幼い頃からの半生を語りながら、「やるべきこと」「やりたいこと」について熱く語られ、これから社会に出ていこうとする高校生たちに、自分がどうあるべきかを伝えられました。
11月8日(火)は、神奈川県川崎市在住で、旧新南陽市出身の絵本編集者・翻訳家・作家の松田素子さんをお迎えし、周南市立徳山小学校で行いました。松田さんは詩人のまど・みちおさんとの親交が深く、『せんねんまんねん』 『くうき』 『絵をかいていちんち』 など多くの作品の編集を手がけられています。また、会場となった徳山小学校はまどさんの母校でもあり、松田さんは「深いご縁を感じて」来校されました。途中休憩をはさみながら、2時間にも及ぶ講演となりましたが、参加された3年生の皆さんは最後までたいへん熱心に話を聞き、また、松田さんとの触れ合いも楽しみながら過ごすことができました。終わりに、まどさん直筆のメッセージが松田さんよりプレゼントされ、とてもよい記念となる学習会となりました。
11月10日(木)は、山口市出身・在住で歌手・作曲家のちひろさんをお迎えしました。今回は、会場を当館にありますレクチャールームとし、美祢市立秋芳南中学校の全校生徒さんに来ていただき、開催しました。ちひろさんは、金子みすゞの詩に曲をつけて、コンサート等の音楽活動を続けながら、金子みすゞの詩にこめられた思いやメッセージを広く伝えられている歌手の方です。今回は、御無理を叶えてもらい、通常コンサートでは使用されないアップライトピアノを使って、2曲弾き語りを披露していただくなど、全7曲を歌っていただきました。曲の合間は、みすゞの詩との出会いや詩の解釈などについて優しく語りかけるようなトークですすめられ、あっという間の60分が過ぎました。また、コンサート終了後、秋芳南中学校の生徒さんには、当館2Fにあります「ふるさと山口文学ギャラリー」 に移動し、担当司書の説明を受けながら、地元山口出身の文学者たちについてわずかな時間ではありましたが学習してもらいました。
11月15日(火)は、東京都出身で、現在中原中也記念館にお勤めの学芸員池田誠さんをお迎えしました。萩市立大井中学校は全校生徒51名の小規模校ですが、元気なあいさつから始まり、最後まで皆熱心に講義を聴いていました。講義の前半は中也の半生や詩人として生きることについてのお話が中心でした。中也が生涯就職せずに親の仕送りによって詩作を続けていたこと、その結果、父親の葬儀にも出させてもらえなかったことなど、興味深いエピソードを多数紹介されました。後半はダダイズムの話から、「意味のない言葉の羅列」が「意味をなしてしまう」という「言葉のおもしろさ」を実感するため、ちぎった新聞紙を生徒1人1人に配られ、拾い上げた言葉を短冊に記入するという演習を行いました。ランダムに並べられた短冊の中の言葉をつなぎ合わせてみると、不思議に「詩」のようなものができあがりました。中也が掴もうとしていた詩の世界に少しだけ触れることができたような瞬間でした。
11月17日(木)は、同じく池田誠さんをお迎えし、県立下関中等教育学校で開催しました。受講したのは4回生(高校1年生)109名の皆さんで、会場のコミュニケーションルームは大学の講義室を思わせるような階段状のゆったりしたすばらしい施設でした。今回は、学校の校時に合わせて、途中10分の休憩をはさみながら2時間行われました。「一つのメルヘン」「汚れつちまつた悲しみに……」などお馴染みの詩を読み解いていく演習も含めながら、中也の世界にたっぷりと浸れる講義となりました。講師の池田さん曰わく、「高校1年生にはやや難しいレベルの内容になったかもしれないが、そのような詩人がこの山口の地にいたことをまず知ってもらい、そのうちの何人かでも興味を持ってもらえればうれしい。」とのことでした。講義終了後は、質疑応答の時間を設けました。さすがに高校生らしく、中也の詩の核心に迫るような質問も挙げられ、感心しました。
11月22日(火)は、10日と同じく歌手・作曲家のちひろさんをお迎えし、岩国市立修成小学校で開催しました。同校は、全校児童29名の小規模校ですが、当日は、保護者・地域の方が17名も参加され、校庭の真ん中に鎮座する巨大なクスノキとともに地域の温かさが伝わるすばらしい学校でした。この冬一番の冷え込みだったにもかかわらず、体育館でのちひろさんの歌声は伸びやかに美しく、みすゞの心が子どもたちはもちろん、会場の皆様に染み渡っていくようでした。『わたしと小鳥とすずと』 では、サビの部分が手話を交えて歌われ、おじいちゃんおばあちゃんたちも皆一緒に手話をしながら、会場が一つになって歌と金子みすゞの世界を味わいました。
「作家」になったいきさつや学生時代の体験を語る田中氏。
電気科・機械科の1年生と2年生、約100名。ほとんどが男子学生さんでした。
「やりたいこと」と「やるべきこと」との折り合いをつけるのは自分だ。
『せんねんまんねん』を紹介される松田氏。
松田さんと楽しい会話が弾む子どもたち。
小さな絵本の中を見て、びっくり!歓声が上がりました。
まどさん直筆のメッセージがブレゼントされました。
児童代表のお礼の言葉。とてもすてきなあいさつでした。
校舎2階の「まどさんのコーナー」を見学される松田氏。
ちひろさんの登場。澄んだ美しい歌声が響きます。
「星とたんぽぽ」を7人の代表生徒が朗唱しました。
ピアノの弾き語りを2曲披露されました。
ラストは「明るい方へ」。手話を交えて、会場とともに。
お礼の言葉とともに花束が渡されました。
当館「ふるさと山口文学ギャラリー」について学習しました。
中原中也記念館学芸員の池田氏。
OHC(教材提示装置)で中也の幼少の写真を紹介。
新聞紙をちぎって詩作の演習の材料に……。
新聞の中の言葉を抜き出して短冊に書きます。
短冊をランダムに並べると、何となく詩のようなものが……。
代表生徒のお礼のあいさつ。心のこもったあいさつでした。
4回生109名が講義を受けました。
大学の講義室のようなすばらしい施設。
中也の詩の表現について考えてみる演習。
中也10歳の頃の「書」を紹介される池田氏。
「手」について中也の芸術論が語られました。
講義後、2名の生徒さんから質問が挙がりました。
校庭で子どもたちを見守る大きなクスノキ。
保護者・地域の皆さんも多数参加されました。
はじめに「大漁」を全校児童で朗唱。
ピアノ弾き語りによる美しい歌声が響きました。
「わたしと小鳥とすずと」の手話を教えるちひろさん。
ランチルーム前の掲示板には、「大漁」の詩が……。
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