マイ・ベスト・ブック 〜この本、おすすめ!〜
No.11(2009年12月)

山口県立山口図書館 新刊児童書研究会編集
山口県立山口図書館 山口県子ども読書支援センター発行
TEL:083-924-2111 FAX:083-932-2817

この「マイ・ベスト・ブック」は、新刊児童書研究会のメンバーが推薦する本のリストです。子ども読書推進活動などにお役立てください。

<絵本>

『なきすぎてはいけない』  内田麟太郎 作  たかすかずみ 絵  岩崎書店  2009年5月
内田麟太郎といえば元気いっぱい優しさいっぱいの「おれたちともだち」シリーズが思い浮かぶ。今回の「なきすぎてはいけない」は、「きつねの電話ボックス」のたかすかずみさんの挿絵でしっとりとした雰囲気に仕上がっています。
  祖父から孫へ優しい語り口で伝える愛しきものへの思い。すべてひらがなで大きな文字でゆったりと表現されていて、祖父母世代の方々にも共感を呼ぶ、そんな絵本です。(C.Y)
『ヒロシマのいのちの水』  指田和 文  野村たかあき 絵  文研出版 2009年5月
「原爆献水供養」という言葉をこの絵本で知りました。ヒロシマへの原爆投下から60年以上が過ぎ、被爆体験を語れる人も年々少なくなっています。今年91歳の宇根利枝さんは、「あの日」水を求めながら死にゆく人々へ一杯の水をあげることができなかったという思いから、50年以上「献水供養」を続けています。宇根さんの思いは次代を担う若者に受け継がれていきます。
  この本は、小学校での平和学習で是非使いたい1冊です。また、広くいろいろな人々にも手にとって読んでいただき、平和への思いを新たにしていただきたいと思います。(C.Y)
『ミリーのすてきなぼうし』  きたむらさとし 作・絵  BL出版  2009年6月
ぼうしやさんのウインドーに飾られた羽根つきのぼうしを気に入ったミリー。けれども、おさいふの中味は空っぽです。悩みに悩んだ店長さんが倉庫から取り出してきた箱の中には……?
  淡い色彩で描かれたやわらかな絵と、お伽噺のようなストーリー。子どもも大人も想像力をかきたてられます。読み終えた後、子どもたちが互いのぼうしを想像しあう微笑ましい光景も見られました。心温まる一冊です。(M.F)
『よーいよーいよい』  さいとうしのぶ 作・絵  ひさかたチャイルド  2009年6月
作者と祖父が過ごした昭和時代の大阪を彷彿とさせる街並みや人物のしぐさや表情までもがしっかりと描かれていて、絵をじっくり見て楽しむことができました。おじいちゃんが歩くときの「よーいよーいよい」がこの絵本のタイトルになっています。巻末に音符があるので、参考にして口ずさみながら読むのもおもしろい。柴犬の姿もとても可愛く写実的に描かれていて、柴犬ファンの私は頬が緩んでしまいます。今の子どもたちにも読み味わってほしいが、昭和時代に子どもであった人々には懐かしさを誘われる作品です。(C.Y)

<小学生向き読み物>

『ベルナのしっぽ 盲導犬とななえさん』  郡司ななえ 文  景山直美 絵  角川書店  2009年3月
平成14年に角川書店から発行された文庫本を、文庫を読む年齢前の児童生徒向けに「読書って楽しい」と思えるように再度文庫本化した「角川つばさ文庫」の一冊。読み仮名がついていて、読書力のある子ならば小学校の中学年くらいから読むことができます。表紙もカラフルで、かわいい盲導犬のイラストで「読んでみようかな。」という気持ちになりそうです。ところどころにある愛らしくかわいい挿絵も楽しみです。盲導犬が市民権を得るまでの初期の苦労がよく分かりました。(C.Y)
『カンフーファイブ 1』  ジェフ・ストーン 作  もきかずこ 訳  ランダムハウス講談社  2009年6月
  『カンフーファイブ 2』  ジェフ・ストーン 作  もきかずこ 訳  ランダムハウス講談社  2009年9月
秘寺・蔵真寺で育った、動物の名前を持つ5人の少年僧たちのお話。突然戻ってきた元兄弟子のインによって、寺は滅ぼされてしまいます。少年たちは、自身とインとの過去の因縁を探るためバラバラに逃げることに…。
  同じ場面を別の人物の視点から描くことにで、新たな真実と謎が浮かび上がる。巻物を取ったり取られたり、捕まえられたり逃げ出したり……。ダイナミックな展開でどんどん先が読みたくなる物語です。(M.S)

<ノンフィクションー小学生向き>

『電池が切れるまで』  宮本雅史 作  みやこしわきな 絵  角川書店  2009年3月
病気とたたかう子どもたちの物語です。痛みや不安、さみしさを抱えて、それでも前向きに一生懸命に生きようとしているわきなちゃんたち。自分は、与えられた尊い命を無駄にしてはいないだろうか、と考えさせられます。(M.S)

<ノンフィクションー中高生向き>

『「フラフラ」のすすめ』  益川敏英 著  講談社  2009年7月
作者は、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さん。将来、熱中できる何かを、様々なことに好奇心を燃やして「フラフラ」しながら探すこと。その楽しさ、大切さについてのメッセージが詰まっています。戦争を体験し、武器ともなりえる科学の世界に従事する者として、平和への責任と祈りを強く持って生きている著者の言葉は、すうっと心に入ってきます。ひっちゃかめっちゃかな子ども時代のエピソードも満載!「15歳の寺小屋」シリーズの1冊。(U.K)

<紙芝居>

『だましりとり』  木村裕一  教育画劇  2009年5月
園児参加型の紙芝居です。だまし絵がつながっていきながら一つのお話が完成していきます。女の子かと思ったらお婆さんに……。桑原茂夫さんの「だまし絵百科」に詳しく紹介されている“レディーと老婆”が登場します。2つの情報をもつ多義図形が出てくることにより、だまし絵となります。また、“ルビンの壷”が出てきたり、大人にとってもその難しさが懐かしくなってくる、発見する楽しさをもっている紙芝居です。9枚目のフルーツおじさんは、ローベル夫妻の「ABCのおかいもの」に通じますよ。(M.I)

以上です。

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