『層雲』は、明治44年4月に荻原井泉水が創刊した自由律俳句を主とする文芸誌です。俳句は季題を離れ定型を捨て「印象の体律」を写すべきと唱えた井泉水の下で、『層雲』は自由律俳句の有力な俳人を輩出しました。山口県出身の俳人、種田山頭火(たねださんとうか)、久保白船(くぼはくせん)、江良碧松(えらへきしょう)もこの『層雲』で活躍し、その選者を務めたりもしています。
防府市出身の種田山頭火(1882~1940)は、大正2年に井泉水に師事し『層雲』に投句、自由律俳人の道を歩み始めます。家業の破産により郷里を離れ、さまざまな苦難と挫折の中で句作も一時中断しますが、大正13年出家得度し、行乞流転の旅に出る大正15年には再び『層雲』に投句し復帰をしています。以後、全国行脚の旅においても、草庵を結ぶ時期においても、句作は衰えることなく、俳友たちとの交歓と彼らの友情に支えられながら、漂泊の俳人として膨大な数の俳句と日記を残しました。
熊毛郡平生町出身の久保白船(1884~1941)は、『層雲』創刊とともに入会し、その生涯を終えるまで『層雲』同人として活躍しました。作風は写実的で繊細、その作品は『層雲』同人の注目を浴び、井泉水をして「山口の白船の辿り着いた境地は『層雲』の目指すところである」と言わしめました。居を徳山(現在の周南市)に移して後は「雑草の会」設立など地方俳壇の育成にも力を注ぎました。山頭火もしばしば白船居を訪れ、終焉の地である松山に向かう途上では、白船に愛用の鉄鉢を贈っています。
熊毛郡田布施町出身の江良碧松(1888~1977)は、明治45年に『層雲』に初登場しました。同じ頃に友人たちと自由律俳句の会「一夜会」を結成、その活発な活動が『層雲』により近隣の同好の士に知られるようになると、山頭火、白船たちと盛んに交流を行っています。郷里で農業に従事するかたわら句作に励み、その作風は純朴簡素、息子を戦争で失い一時期句作から離れていましたが、戦後再び句友との句会を再開するとともに、『層雲』に再登場し、昭和44年には井泉水賞を受賞しています。
今回の展示では、『層雲』において「周防三羽ガラス」と称されたこの3人の俳人の作品を、句作活動と句友との交流を中心に紹介します。
期間:平成26年8月30日(土曜日)~12月27日(土曜日)
場所:山口県立山口図書館 2階 ふるさと山口文学ギャラリー
展示冊数:約30冊
主催:山口県立山口図書館、やまぐち文学回廊構想推進協議会
展示資料
俳句誌『層雲』と荻原井泉水
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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層雲 第1巻 (復刻版) | 不二出版 | 1996.6 | R911.305/M 6 | |
新傾向句の研究 | 河東 碧梧桐∥著 | 籾山書店 | 1915.6 | 911.304/E 5 |
特選名著複刻全集近代文学館 [18] 碧梧桐句集 | 名著複刻全集編集委員会∥編集 | 日本近代文学館 | 1982 | R918.6/K 1 |
皆懺悔 | 荻原 井泉水∥著作 | 春秋社 | 1928.12 | /O 25 |
井泉俳話 | 荻原 井泉水∥著作 | 層雲社 | 1921.6 | 911.304/F 1 |
層雲 第19卷第11,12號、第20卷第2-10,12號 | 層雲社 | 1330-1331 | R911.305/E 4 | |
種田山頭火ノオト No.5 | 種田山頭火研究会∥[編] | 種田山頭火研究会 | 1984.9 | Y911.3/L 1 |
層雲 第16巻 (復刻版) | 不二出版 | 1997.6 | R911.305/M 6 |
種田山頭火(たねだ さんとうか 1882~1940)
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
---|---|---|---|---|
層雲 第6巻 (復刻版) | 不二出版 | 1996.9 | R911.305/M 6 | |
層雲 第46巻 (復刻版) | 不二出版 | 1999.6 | R911.305/M 6 | |
層雲 第21卷第12號 | 層雲社 | 1932.4 | R911.305/E 4 | |
鉢の子 | 種田 山頭火∥著 | ほるぷ出版 | 1983.12 | Y911.3/L 3 |
草木塔 | 種田 山頭火∥著 | ほるぷ出版 | 1983.12 | Y911.3/L 3 |
山行水行 | 種田 山頭火∥著 | ほるぷ出版 | 1983.12 | Y911.3/L 3 |
雑草風景 | 種田 山頭火∥著 | 杖社 | 1936.2 | Y911.3/G 6 |
柿の葉 | 種田 山頭火∥著 | ほるぷ出版 | 1983.12 | Y911.3/L 3 |
孤寒 | 種田 山頭火∥著 | 杖社 | 1939.1 | Y911.3/G 9 |
鴉(雀) | 種田 山頭火∥著 | ほるぷ出版 | 1983.12 | Y911.3/L 3 |
三八九集 | 種田 山頭火∥著 | 古川書房 | 1977 | Y911.3/K 7 |
草木塔 第6版 | 大山 澄太∥編 | 大耕舎 | 1969 | Y911.3/J 9 |
愚を守る | 種田 山頭火∥遺稿 | 春陽堂書店 | 1941.8 | Y911.3/H 1 |
久保白船(くぼ はくせん 1884~1941)
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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層雲 第8巻 (復刻版) | 不二出版 | 1996.12 | R911.305/M 6 | |
層雲 第89巻 (復刻版) | 不二出版 | 2002.6 | R911.305/M 6 | |
ふきのたう | 久保 白船∥[著] | [1941] | Y911.3/H 1 | |
久保克彦遺作画集 | 久保 克彦∥[画] | 木村亨 | 2002.7 | Y723/N 2 |
あわ雪 | 河村 義介∥[編] | 河村義介 | 1923.6 | Y911.3/F 3 |
江良碧松(えら へきしょう 1888~1977)
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
---|---|---|---|---|
層雲 第3巻 (復刻版) | 不二出版 | 1996.9 | R911.305/M 6 | |
層雲 第7巻 (復刻版) | 不二出版 | 1996.9 | R911.305/M 6 | |
松吹く風 | 江良 松蔵∥著 | 江良碧松句集刊行会 | 1974 | Y911.3/K 4 |
層雲 周防一夜会句集 1 | 周防一夜会 | 1980.11 | Y911.3/L 0 | |
新文林 第1巻第7号 五行文「深夜」(p96) | 白鳳社 | R910.5/D 8 |
展示関係資料
◎俳句史全般
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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現代俳句大事典 | 稲畑 汀子ほか∥監修 | 三省堂 | 2005.11 | R911.303/N 5 |
現代俳句辞典 (『俳句』昭和52年9月臨時増刊) | 角川書店 | 1977 | R911.303/K 7 | |
近代俳論史 | 松井 利彦∥著 | 桜楓社 | 1965.08 | R911.304/J 5 |
明治俳壇史 | 村山 古郷∥著 | 角川書店 | 1979 | 911.302/K 9 |
大正俳壇史 | 村山 古郷∥著 | 角川書店 | 1980.11 | R911.302/L 0 |
昭和俳壇史 | 松井 利彦∥著 | 明治書院 | 1979.6 | R911.36/K 9 |
◎俳句誌『層雲』と荻原井泉水
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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自由律俳句文学史 | 上田 都史∥著 | 永田書房 | 1975 | R911.302/K 5 |
自由律俳句作品史 | 上田 都史∥編 | 永田書房〈目黒区〉 | 1979.6 | R911.36/K 9 |
鑑賞現代俳句全集 第3巻 自由律俳句の世界 | 立風書房 | 1980.10 | R911.308/L 0 | |
俳句文学新考 | 井上 三喜夫∥著 | 育英書院 | 1939 | 911.304/G 9 |
井泉水・放哉・山頭火 | 上田 都史∥著 | 永田書房 | 1976 | 911.36/K 6 |
新しき俳句の作り方 | 荻原 井泉水∥著 | 日本評論社出版部 | 1921.8 | 911.307/F 1 |
新俳句提唱 | 荻原 井泉水∥著 | 天佑社 | 1922.3 | 911.304/F 2 |
俳談 | 荻原 井泉水∥著 | 千倉書房 | 1931.7 | 911.304/G 5 |
俳句教程 | 荻原 井泉水∥著 | 千倉書房 | 1936.3 | 911.307/G 6 |
俳句する心 | 荻原 井泉水∥著 | 子文書房 | 1941.5 | 911.304/H 1 |
自然・自己・自由 | 荻原 井泉水∥[著] | 勁草書房 | 1972 | 911.5/K 2 |
層雲の道 | 荻原 井泉水∥述 | 層雲社 | 1973.2 | Y911.3/K 3 |
井泉水日記 上巻 | 荻原 井泉水∥著 | 筑摩書房 | 2003.11 | 915.6/N 3 |
井泉水日記 下巻 | 荻原 井泉水∥著 | 筑摩書房 | 2003.12 | 915.6/N 3 |
〔定期刊行物〕
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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層雲 第1~97巻 (復刻版) | 不二出版 | 1996~2002 | R911.305/M 6 | |
種田山頭火ノオト No.1~15 | 種田山頭火研究会∥[編] | 種田山頭火研究
会 |
1981~2004 | Y911.3/L 1 |
山頭火文庫通信 No.1~15 | 藤津 滋人∥編集 | 藤津 滋人,山文舎 | 1996~2004 | Y911.3/M 6 |
窗 第1~9集 | 酒井 仙酔樓 | 1953~1955 | Y911.3/I 3 |
〔参考文献〕
書名・巻号 | 収録記事 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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学苑 第264,266号 | 層雲創刊のころ(荻原井
泉水)(264-p92-101,266-p2-11) |
昭和女子大学光葉会 | 1962.1~1962.2 | R051/J 2 |
俳句 昭和38年9月号(第12巻第9号) | 回顧の
年齢に立つ―「層雲」第六百号に際して―(荻原井泉水)(p90-95) |
角川書店 | 1963.9 | R911.305/I 2 |
俳句 昭和51年8月号(第25巻第8号) | 荻原井
泉水追悼特集(p94-161) |
角川書店 | 1976.8 | R911.305/I 2 |
◎種田山頭火
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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風と雲と酒 今甦る流旅人 山頭火 生誕百二十年記念 | 毎日新聞社 | 2001.1 | Y911.3/N 1 | |
新潮日本文学アルバム 40 種田山頭火 | 新潮社 | 1993.6 | Y911.3/M 3 | |
山頭火の足跡 | 山頭火研究会∥編 | 山頭火研究会 | 1992.10 | Y911.3/M 2 |
山頭火の世界 | 読売新聞中部本社 | 1990 | Y911.3/M 0 | |
山頭火 資料と研究 第1~7号〔定本山頭火全集附録〕 | 春陽堂 | 1972~1973 | R911.36/K 2 | |
山頭火の本 別冊1 山頭火 研究と資料 | 春陽堂書店 | 1988 | 911.36/K 9 | |
国文学解釈と鑑賞 881 種田山頭火の世界 | 至文堂 | 2004.10 | Y911.3/N 4 | |
山頭火全句集 | 種田 山頭火∥著 | 春陽堂書店 | 2002.12 | Y911.3/N 2 |
種田山頭火を知る事典 | 藤津 滋生∥編 | 藤津 滋生 | 1994.2 | Y911.3/M 4 |
俳人山頭火の生涯 | 大山 澄太∥著 | アポロン社 | 1957.10 | Y911.3/I 7 |
種田山頭火 | 金子 兜太∥著 | 講談社 | 1974 | 911.36/K 4 |
山頭火を語る | 荻原 井泉水∥編 | 潮文社 | 1980 | 911.36/K 2 |
放浪の俳人山頭火 | 村上 護∥著 | 講談社 | 1988.8 | Y911.3/L 8 |
山頭火と子供たち | 仲村 喜代子∥著 | 春陽堂 | 1982.8 | 911.36/L 2 |
其中庵 俳人種田山頭火と小郡 | 武重 石火矢∥編 | 小郡町教育委員会 | 1985.3 | Y911.3/L 5 |
山頭火 終焉の松山 | 種田 山頭火∥著 | 創思社出版 | 1981.9 | Y915/L 1 |
ひともよう 山頭火の一草庵時代 | 藤岡 照房∥著 | 藤岡照房 | 1996.9 | 911.36/M 6 |
山頭火と松山 | まつやま山頭火倶楽部∥編 | アトラス出版 | 2009.7 | Y911.3/N 9 |
◎久保白船
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
---|---|---|---|---|
久保白船 | 平生町郷土史研究会∥編集 | 平生町教育委員会 | 2003.10 | Y911.3/N 3 |
踞ればふきのとう | 国重 昌利∥著 | 文芸社 | 2006.3 | Y911.3/N 6 |
父 白船を語る | 田村 光∥著 | 田村光 | 1976.1 | Y911.3/K 6 |
徳山俳諧史 | 河村 漣月∥著 | 1955.9 | Y911.3/I 5 |
◎江良碧松
書名 | 著者名 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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田布施町史 | 田布施町史編纂委員会∥[編] | 田布施町 | 1990.12 | Y235.3/M 0 |
自由律俳人 江良碧松 | 久光 良一∥著 | 田布施町教育委員会 | 1997.5 | Y911.3/M 7 |
飲んだ水みんな汗にしてはたらく | 江良 碧松∥[著]
寺田 幹生∥編著 |
近代文芸社 | 2005.11 | Y911.3/N 5 |