詩人・評論家の杉本春生(すぎもと はるお)は、大正15年(1926)、山口県玖珂郡麻里布町(現・岩国市)に生まれました。生家は糸問屋を営みますが、昭和8年(1933)、不況下の事業不振により一家は朝鮮に移住、杉本はこの地で学び育ちます。昭和20年(1945)7月、法学専門学校在学中に愛媛県の部隊に入隊することになりますが敗戦を迎え、郷里岩国市に引き揚げました。
昭和22年(1947)、大学に入るための準備中に肺結核を発病、長い闘病生活を続けるなかから詩作に入り、『芸南詩人』『日本未来派』『地球』などの同人となります。後年、20代に発行した2つの詩集を収録する『詩集 初めての歌』のあとがきで、当時の状況を振り返り、「もっとも死に親しかった」「こんな状況に置かれたとき、どんな稚拙なことばにせよ、ことばを信じるということは、なんと力強い支えになったことか」と記しています。
昭和30年(1955)、評論「『量』より『質』への変貌-現代詩は貧困か」が『文学界』の懸賞論文に入選。その後、『抒情の周辺』『現代詩の方法』などの詩論集発行、新聞や文芸誌への執筆や詩壇選者、『現代山口県詩選』の編集委員、「H氏賞」「地球賞」などの選考委員を務めたほか、大学の教授、講師を歴任しました。また、哲学者・フランス文学者の森有正の研究でも知られ、著書に『森有正論』『森有正-その経験と思想』があります。
平成2年(1990)7月、64歳で永眠。没後、『杉本春生全集』(全5巻、別巻1巻)が刊行されています。
今回の展示では、没後25年となる杉本春生の作品を紹介します。
期間:平成27年8月29日(土曜日)~平成28年1月10日(日曜日)
※次の期間は閉館します。
毎週月曜日、月末整理日(9月30日(水曜日)、10月30日(金曜日)、11月27日(金曜日))、年末年始(12月28日(月曜日)~1月4日(月曜日))
場所:山口県立山口図書館 2階 ふるさと山口文学ギャラリー
展示冊数:約20冊
主催:山口県立山口図書館
共催:やまぐち文学回廊構想推進協議会
展示関係資料目録 目次
著書・編著書
タイトル | シリーズ名 | 責任表示 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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抒情の周辺 | ユリイカ新書 現代詩論シリーズ 4 | 杉本春生∥著 | 書肆ユリイカ | 1955.9 | Y911.5/I 5 |
現代詩の方法 | 杉本春生∥著 | 思潮社 | 1959.7 | Y911.5/I 9 | |
抒情の思想 | 杉本春生∥著 | 彌生書房 | 1969.3 | Y911.5/J 9 | |
森有正論 | 杉本春生∥著 | 湯川書房 | 1972.9 | Y121/K 2 | |
村野四郎詩集 | 旺文社文庫 | 村野四郎∥著 杉本春生∥編 | 旺文社 | 1973.2 | Y911.5/K 3 |
廃墟と結晶 戦後詩の光と闇 | 杉本春生∥著 | サンリオ出版 | 1974.8 | Y911.5/K 4 | |
詩集 初めての歌 | 杉本春生∥著 | 渓水社 | 1976.9 | Y911.5/K 6 | |
森有正 その経験と思想 | 杉本春生∥著 | 花神社 | 1978.9 | Y121/K 8 | |
愛と死への旅 | 日本の自然と美 2 海・岬 | 杉本春生∥著 丸岡孝∥写真 | ぎょうせい | 1977.6 | Y290/K 7 |
光と闇のなかの詩人 その自然と人間性 | 杉本春生∥著 | 書肆季節社 | 1982.12 | Y910/L 2 | |
森有正論 | 杉本春生∥著 | 沖積舎 | 1985.3 | Y121/L 5 | |
杉本春生全集 第1巻 | 杉本春生∥著 大岡信[ほか]∥編集 | 沖積舎 | 1992.8 | Y918/M 2 | |
杉本春生全集 第2巻 | 杉本春生∥著 | 沖積舎 | 1992.11 | Y918/M 2 | |
杉本春生全集 第3巻 | 杉本春生∥著 | 沖積舎 | 1993.6 | Y918/M 2 | |
杉本春生全集 第4巻 | 杉本春生∥著 | 沖積舎 | 1993.11 | Y918/M 2 | |
杉本春生全集 第5巻 | 杉本春生∥著 | 沖積舎 | 1994.10 | Y918/M 2 | |
杉本春生全集 別巻 | 杉本春生∥著 杉本三千代∥編 | 沖積舎 | 1995.9 | Y918/M 2 |
雑誌掲載論文など
タイトル | 記事名・掲載頁 | 責任表示 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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文学界 昭和30年新年号 | 杉本春生「『量』より『質』への変貌 現代詩は貧困か」p166-170 | 文藝春秋新社 | 1955.1 | R910.5/H 7 | |
地球 第17号 | 杉本春生「金子光晴論」p3-11 | 地球社 | 1955.6 | Y911.5/I 5 | |
現代山口県詩選 1971年版 | 杉本春生「さまざまな開花・風土の匂い 県下の詩活動について」p144-154 | 現代山口県詩選編集委員∥編 | 山口県詩人墾話会 | 1971.11 | Y911.5/J 4 |
現代山口県詩選 1973年版 | 杉本春生「現代詩の断面」p144-151 | 現代山口県詩選編集委員∥編 | 山口県詩人懇話会 | 1973.11 | Y911.5/J 4 |
立原道造の文学 『解釈』所収論文集 (シリーズ文学 3) | 杉本春生「『愛する』ことの挫折 晩期のノート・書翰から」p73-79 | 解釈学会∥編 | 教育出版センター | 1975.11 | Y910/K 5 |
国文学 解釈と教材の研究 第23巻第13号 | 特集:中原中也 詩の内部 杉本春生「寒い夜の自我像(山羊の歌) 中原中也詩鑑賞」 | 学燈社 | 1977.10 | Y911.5/K 7 | |
花候 | 解題:杉本春生「ひとつの鏡像 句集『花候』に」 | 大中祥生∥著 | 昭和出版 | 1977.11 | Y911.3/K 7 |
森有正記念論文集 経験の水位から | 杉本春生「痛みとしての感覚と経験」p271-320 | 中川秀恭∥編 | 新地書房 | 1980.9 | Y121/L 0 |
香月泰男 その造形と抒情の軌跡 | 杉本春生「苦悩する<黒>と自然の模様化 シベリア・シリーズについて」p175-180 | [香月泰男∥画] 山口県立美術館編集 | 山口県立美術館 | 1981.1 | Y723/L 1 |
21世紀 第42号 | 杉本春生「『自由』を求める少女の眼 岩瀬成子『朝はだんだん見えてくる』」 | 岩国地方文化人連盟 | 1981.12 | Y910/K 2 | |
詩と思想 第2巻23号 | 現代詩展望 ’83全国版大特集 杉本春生「無風状態に新しい“風”」p135 |
土曜美術社 | 1983.10 | Y911.5/L 3 | |
21世紀 第48号 | 杉本春生「巻頭のことば」p5 | 地方文化の会・岩国 | 1984.3 | Y910/K 2 | |
岩国短期大学紀要 第13号 | 杉本春生「佐々木小次郎と錦帯橋 随想的散策」p87-88 | 岩国短期大学 | 1985.3 | Y051/K 3 | |
天花 第25号 (山口県立美術館ニュース) | 杉本春生「舌足らずの県美展観」p6-7 | 山口県立美術館 | 1985.9 | Y706/K 9 | |
郷土の名詩 西日本篇 | 杉本春生「概観・中国」p116-122 | 小海永二∥編 | 大和書房 | 1986.09 | Y911.5/L 6 |
ART EVENT GATHERING TRASH ゴミ拾いをアートするイベント山口-日本海-二位ノ浜 | 杉本春生「現代の錬金術師 殿敷侃 新しい時間を主宰する」 | 澄川やしま∥編集 | 殿敷侃 | 1987.6 | Y706/L 7 |
俯瞰 | 序文:杉本春生「二重の視野 前衛と伝統」 | 大中祥生∥著 | 草炎俳句会 | 1990.8 | Y911.3/M 0 |
想い出の木造校舎 山口県内全域小中学校木造校舎 | 杉本春生作詞「岩国市立柱島小中学校校歌」 | 川口健治∥絵 | 藤本印刷出版事業部 | 2008.10 | Y526/N 8 |
杉本春生について書かれたもの
タイトル | 記事名・掲載頁 | 責任表示 | 出版者 | 出版年 | 請求記号 |
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詩学 第45巻第11号(通巻484号) | 相良平八郎「純粋経験と人間探求」(追悼 杉本春生)p56-57 | 詩学社 | 1990.10 | Y911.5/M 0 | |
現代山口県詩選 1990年版 | 野上悦生「我が師 杉本春生」p188-195 | 現代山口県詩選編集委員会∥編 | 山口県詩人懇話会 | 1990.11 | Y911.5/J 4 |
21世紀 第65号 | 特集「伊藤正一・杉本春生を偲ぶ」 | 地方文化の会・岩国 | 1990.12 | Y910/K 2 | |
海 | 杉本三千代‖著 | Hyacinth House | 2013.7 | Y911.5/P 3 |