日本の伝統的な文芸として長い歴史を持つ短歌は、明治20年代から30年代にかけて、浪漫主義を掲げた与謝野鉄幹(よさのてっかん)や、写生を重んじた正岡子規(まさおかしき)らが登場することで、個人の感情や美意識を表現するものとしての「近代短歌」へと、大きく変貌してゆきます。
こうした動きは、明治末期から大正期にかけて中央から地方へと浸透し、山口県内でも、各地域で文芸誌が発行されたり、「防長新聞」「関門日日新聞」に歌壇欄が設けられたりして、近代短歌の詠み手たちが活躍し始めます。
大正11年には、県域を対象とする短歌雑誌「白梅(しらうめ)」が刊行されます。清末(きよすえ)毛利家の当主毛利碧堂(もうりへきどう)を主幹とし、編集には大田哀歌鳥(おおたあいかちょう)らがあたったこの雑誌には、小川五郎(おがわごろう)、竹内八郎(たけうちはちろう)、友廣保一(ともひろやすいち)をはじめとして、有名・無名を問わず、多くの人々がつどって作品や研究を発表し、ときには誌上で短歌論を戦わせることもありました。刊行期間こそ約三年と短いながらも、「白梅」が「防長歌壇史上に大きな足跡を残した」(小川五郎「白梅三年史」)といわれるゆえんです。
今回の展示では、毛利碧堂生誕130年にちなんで、短歌雑誌「白梅」と、そこにつどったやまぐちの文学者たちについて、展示紹介します。
期間:令和2年8月29日(土曜日)~令和3年1月10日(日曜日)
場所:山口県立山口図書館2階 ふるさと山口文学ギャラリー
主催:山口県立山口図書館、やまぐち文学回廊構想推進協議会
展示資料目録
県下初の短歌雑誌「白梅」
- 「白梅」第5號(大正11年11月号)
- 毛利碧堂 主幹,白梅発行所,1922.11,請求記号:Y911.1/F 2
- 「白梅」第2年第2號(大正12年2月号)目次(写)
- 「白梅」第2年第5号(大正12年5月号)表紙(写)(山口県文書館所蔵)
- 「シラムメ」第2年第8号(大正12年9月号)表紙(写)(山口県文書館所蔵)
- 『白梅歌集』(写・抄)(国立国会図書館デジタルコレクションより)
- 毛利碧堂 選,大田哀歌鳥 等編,白梅詩社,1923.10
「白梅」主幹・毛利碧堂
- 「雑詠抄」(『白梅歌集』・写)(国立国会図書館デジタルコレクションより)
- 毛利碧堂 選,大田哀歌鳥 等編,白梅詩社,1923.10
- 「防長新聞」歌壇 大正12年2月7日(写)
- 「防長新聞」大正12年2月13日3面(写)
- 『梅光女学院史』
- 黒木五郎 編,下関梅光女学院,1934.5,請求記号:Y376.6/G 4
- 『現代防長人物史 人』
- 井関九郎 撰,発展社,1917.12,請求記号:Y280/E 7
- 「銃猟の秘訣(一)」(写)(国立国会図書館デジタルコレクションより)
- 毛利元恒 著,「銃猟界」9巻3号,金丸鉄砲店,1913.3
「白梅」を支えた大田哀歌鳥
- 「白梅」第2年第2號(大正12年2月号)
- 毛利碧堂 主幹,白梅詩社,1923.2,請求記号:Y911.1/F 2
- 「関門日日新聞」大正11年2月18日5面(写)
- 『歌集 自画像』
- 大田哀歌鳥 著,自画像刊行会,1970.3,請求記号:Y911.1/K 0
- 「文藝往来」(写)
- 大田義一 編輯,文藝往来社,1924.6
- 「防長歌壇の回顧」
- 大田哀歌鳥 著(「水可美」1巻1-11号,水可美発行所,1933.2,請求記号:Y911.1/G 3)
「白梅」の歌人 小川五郎
- 「白梅」第2年第3號(大正12年3月号)
- 毛利碧堂 主幹,白梅詩社,1923.3,請求記号:Y911.1/F 2
- 『防長文化史雑考』
- 小川五郎先生遺文集刊行会 編,小川五郎先生遺文集刊行会,1970,請求記号:Y211/K 0
- 「水可美」
- 水上発行所,1933,請求記号:Y911.1/G 3
- 『春蘭』
- 小川五郎・博子 著,小川五郎,1969.12,請求記号:Y911.1/J 9
- 『櫻吹雪の舞ふ野邊に』
- 山中・山高五十六期五十六会,2002.12,請求記号:Y376.6/N 2