企画展「やまぐちの近代短歌」のポスターです。明治末から昭和期の中央歌壇では、短歌誌『吾妹(わぎも)』を創刊した下関出身の生田蝶介(いくた・ちょうすけ)や、一時期徳山に暮らし、後に『明星(みょうじょう)』を創刊した与謝野鉄幹(よさの・てっかん)など、山口ゆかりの歌人たちが活躍しました。

また県内では、大正11年、毛利碧堂(もうり・へきどう)により創刊された山口県下初の歌誌「白梅(しらうめ)」に集い、その後おのおのの活動の場を広げた大田哀歌鳥(おおた・あいかちょう)や小川五郎(おがわ・ごろう)などをはじめとして、地元を中心に活躍する歌人たちが輩出されました。

今回は、昭和8年に創刊され、山口県の歌壇の一時代を画したといわれる歌誌「水可美(みなかみ)」同人で、後に「なぎ」を主宰した友廣保一(ともひろ・やすいち)氏の遺族から新たに寄贈された資料を交えて、やまぐちの近代短歌の様子を展示、紹介します。

期間:平成24年11月1日(木)~平成25年2月27日(水)

場所:山口県立山口図書館 2階 ふるさと山口文学ギャラリー

展示冊数:約40冊

主催:山口県立山口図書館

共催:やまぐち文学回廊構想推進協議会

月曜、月末および資料点検期間(11月26日~11月30日)は休館します。詳細は「図書館カレンダー」を参照してください。

展示資料目録

友廣保一とやまぐちの近代短歌

友廣保一(ともひろ・やすいち) 1904-1993

熊毛郡室積村(現・光市)生まれ。広島、松山で書店に勤めた後、山口市で古書店「第三書房」を営んだ。アララギ同人。県内では、『白梅』『水可美』他、多くの歌誌、文芸誌に関わった。『なぎ』を主宰。

『アララギ』
アララギ発行所,1941.1,R911.105/D 8
『流るる音』
友広保一∥著,石川書房,1942.9,Y911.1/L 8
『流るる音 続』
友広 保一∥著,石川書房,2001.01,Y911.1/L 8
『なぎ 創刊号』
なぎ発行所,2004.1,友廣肇氏寄贈
『なぎ 通巻120号(終刊号)』
なぎ発行所,1936.2,友廣肇氏寄贈

毛利碧堂(もうり・へきどう) 1890-1966

清末毛利家の第十代当主。大正11年、山口県下初の歌誌『白梅』を創刊し、大正、昭和の県歌壇に大きな影響を与えた。

大田哀歌鳥(おおた・あいかちょう) 1890-1977

佐波郡佐波村(現・防府市)生まれ。本名・義一。毛利碧堂主宰の「白梅詩社」に参加し、編集・発行を担当。『あらつち』にも参加し、中心的存在となる。

『文藝往来』
大田/義一∥編輯,文藝往来社,1924.6,Y910.5/F 4
『自画像』
大田/哀歌鳥∥著,自画像刊行会,1970,友廣肇氏寄贈
『あけぼの 第1巻1号〜4巻11』
あけぼの社,あけぼの社,1926.08,Y911.1/F 6
『桐乃林』
山根 芳一∥[著],山根 百合正,2001.05,Y911.1/N 1
『水可美 創刊号』
水上発行所,1933,友廣肇氏寄贈
『水可美 通巻75号 終刊号』
水上発行所,1940,友廣肇氏寄贈

小川五郎(おがわ・ごろう) 1902-1969

山口市生まれ。中学校時代から短歌を始め、『防長新聞』の歌壇や県内の歌誌に参加。昭和8年、県内の短歌仲間と『水可美』を創刊。戦後は、教育者として教育に専念すると同時に、郷土史や考古学にも取り組んだ。

江原青鳥(えはら・せいちょう) 1896-?

大津郡日置村生まれ。中央歌壇では『吾妹』などに所属し、郷土の歌誌では、『白梅』『あけぼの』『水可美』の同人として活躍した。地元で人丸短歌会を指導した。

田村盛一(たむら・もりいち) 1893-1970

県立山口図書館に勤めていた田村は、大正2年(1927)、同好の館員や、閲覧にやってきた有志と毛筆の回覧誌『こだま』を作成したが大正7年(1932)、詩歌誌『木霊』として再刊、大正9年(1934)まで続いた。小川五郎も田村の指導を仰ぎ、「木霊詩社」に加わった。青年時代の嘉村礒多も田村の門をたたいたと言われている。

『防長文化史雑考』
小川五郎先生遺文集刊行会∥編,山口県教育会,1970.,Y211/K 0
『春蘭 小川五郎 小川博子歌集』
小川五郎 小川博子著,小川五郎 小川博子,1969,友廣肇氏寄贈
『初代館長佐野友三郎氏の業績』
[田村盛一著] 山口県立山口図書館編集,山口県立山口図書館,1943,Y289/SA66
『水可美 第1巻3号』
水上発行所,1933,友廣肇氏寄贈
『山鳥』
江原 青鳥∥著,ぬばたま短歌会,1973,Y911.1/K 3
『歌集秋沙』
津崎/皓∥著,水可美發行所,1939.08,友廣肇氏寄贈
『歌集青蜩』
津崎/皓∥著,水可美發行所,1934.01,Y911.1/G 4
『歌集 うつぎ』
宇佐川正明∥著,あけぼの社,1929,友廣肇氏寄贈
『やまなみ 山根二郎遺歌集』
山根二郎著,山本由美子,2002,Y911.1/N 2
『山彦 第1巻第2号』
山彦発行所,1922,友廣肇氏寄贈
『あしひき 創刊号』
あしひき同人社,1923,友廣肇氏寄贈
『山峡 第3巻第5輯』
草人荘,1930,友廣肇氏寄贈
『海港』
海港歌人社,海港歌人社,1941,Y911.1/G 9
『防長文学 第5巻11,12 第 6巻第 1号合併編集号』
山口県出版株式会社,山口県出版株式会社,1944,友廣肇氏寄贈
『文芸風土 昭和20年12月号』
西日本出版,西日本出版,1945,Y910/H 5
『山口歌人 第2巻第4号』
山口県歌人協会,1950,友廣肇氏寄贈
『山口県短歌 創刊号』
山口県短歌人連合会,1955,Y911.1/I 5

与謝野鉄幹と生田蝶介

与謝野鉄幹(よさの・てっかん) 1873-1935

京都生まれ。本名、寛。詩人、歌人。兄が徳山の赤松家の養子となった縁で、女学校の教師として徳山で暮らした。上京後、東京新詩社を創立し、『明星』を創刊、新派の短歌運動に貢献した。

『明星 巳年第1号』
与謝野/鉄幹∥編集,東京新詩社,1905.01,中谷文庫
『天地玄黄』
与謝野/鉄幹∥著,明治書院,1897,B911.56/C 7
『むらさき』
與謝野/寛∥著,東京新詩社,1901.4,Y911.5/D 1
『毒草』
与謝野/鉄幹∥著,本郷書院,1904.5,Y911/D 4
『与謝野寛遺稿歌集』
[与謝野/寛∥著],明治書院,1935.5,Y911.1/G 5

生田蝶介(いくた・ちょうすけ) 1889-1976

下関市長府生まれ。13歳で京都に出て叔父の養子となった。博文館で編集者として『講談雑誌』を出版し、雑誌に初めて短歌欄を設けた。大正13年、短歌誌『吾妹』を創刊し、歌人として大正・昭和期の歌壇に大きな業績を残した。

『吾妹 第11巻第4号』
生田/蝶介∥編集,東京新詩社,1934.4,Y911.1/G 3
『長旅』
生田/蝶介∥著,明治書院,1916.11,Y911.1/E 6
『渦潮』
生田/蝶介∥著,東京新詩社,1922.1,Y911.1/F 2
『聖火燃ゆ』
生田/蝶介∥著,本郷書院,1928.1,Y/I 39
『生田蝶介全歌集』
生田/蝶介∥著 生田蝶介全歌集刊行委員会∥編,明治書院,1990.11,Y911.1/M 0

県内の歌誌と歌人たち

岩松文弥(いわまつ・ぶんや) 1898-1954

山形県生まれ。山口県へは昭和12年、山口県立長府高等女学校へ赴任し、亡くなるまで宇部市内で教育に携わった。歌誌『アララギ』に投稿し、昭和25年、『あらつち』を創刊した。昭和29年の急逝後は、竹内八郎、大田哀歌鳥らがその志を引き継いだ。

竹内八郎(たけうち・はちろう) 1899-1974

萩市出身。山口県立萩商工高等学校の教員となり、県内の歌誌『白梅』や『水可美』『文芸風土』などに参加する。岩松文弥の後を継いで、歌誌『あらつち』の主宰を20年務めた。

『あらつち 第5巻5月号』
あらつち社,1954.05,Y911.1/I 0
『あらつち 第4巻7月号』
あらつち社,1953.07,Y911.1/I 0
『あらつち歌集 第二集』
あらつち社,1979.10,Y911.1/I 0
『岩松文弥歌集』
岩松/文弥∥著,岩松文弥歌集復刊会,1982.11,Y911.1/L 2
『岩松文弥作品集』
岩松 文弥∥著,岩松文弥先生歌碑建設委員会,1956.11,Y/I 94

橋本武子(はしもと・たけこ) 1913-1992

周防大島町生まれ。久賀高等女学校時代より独学で短歌を詠み始める。昭和21年「青潮短歌会」を設立、歌誌『青潮』を創刊した。

『青潮 第5号 』
青潮短歌会,1958.7,Y911.1/I 8
『黒髪抄』
橋本 武子∥著,[蛭本博彦],1981,Y911.1/L 1
『ゆく水』
橋本 武子∥著,短歌新聞社,1972,Y911.1/K 2
『黒衣』
橋本 武子∥著,新星書房,1957,Y911.1/I 7
『橋本武子全歌集』
橋本 武子∥著,青潮短歌会,2006.5,Y911.1/N 6

小島経彦(こじま・つねひこ) 1891-1984

萩市生まれ。18歳より38年間小学校教員を勤める。昭和42年地元萩に「黎明短歌会」を発足。また、中央では『まひる野』の重鎮として活動した。

『黎明短歌 昭和53年7月号』
黎明短歌会,1978,Y911.1/K 8
『晩潮』
小島 経彦∥著,小島経彦氏古稀記念会,1961.05,911.16/J 1
『寒雲雀』
小島 経彦∥著,1976,Y911.1/K 6

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