山口お宝展「明治維新150年記念事業」協賛展示

山口市内で開催中の「山口お宝展」の協賛展示を行っています。

今回の展示は『散兵教練書』です。

展示期間:平成26年3月1日(土曜日)~4月6日(日曜日)

『散兵教練書』(さんぺいきょうれんしょ)

『散兵教練書』の画像です。

第二次幕長戦争(四境戦争)(しきょうせんそう)

幕末の動乱期、長州藩は内外で戦いの連続でした。文久3年(1863)、攘夷実行のため外国船を砲撃、元治元年(1864)7月に禁門の変により朝敵となり、8月には英仏蘭米の四国連合艦隊による下関砲撃(馬関戦争)で西洋の近代兵器の威力を目の当たりにします。この敗戦で藩論は幕府への恭順に傾き、朝廷が長州征伐を命じた第一次幕長戦争では三家老の切腹などにより恭順の意を示し、戦闘に至らず終結しました。

この後、高杉晋作の決起による諸隊と藩政府軍との内戦(元治の内訌)を経て、藩論は「武備恭順」(幕府に対して恭順ではあるが、攻撃を受けたときは武力で戦う)へと一転され、軍事組織の整備、大村益次郎を最高責任者とした西洋軍制の導入、武器の購入などを行っていきます。

そして慶応2年(1866)6月、第二次幕長戦争(長州征伐、長州征討、長州戦争とも)が始まります。この戦いは長州藩を取り囲む四つの境(芸州口、大島口、石州口、小倉口)で行われたため、長州では「四境戦争」(四境戦役、四境の役)とよんでいます。この戦いに敗退した幕府は権威を失墜し、幕府権力解体へと政局は大きく動いていきます。

長州軍の散兵戦術

第二次幕長戦争(四境戦争)において、長州軍は散兵戦術を駆使しました。これは兵士を密集させず散開させて行うもので、少数の兵で多数の兵に立ち向かう場合に有効です。対戦した相手方の史料には、長州軍の戦い方について「山々峰々から立ち現れ、まるで猿のように動き回り、なかなか砲撃が当たらない」と書かれています。一方、この戦術は広く兵士が散開するため指揮官の命令が行き届かず、兵士各自が充分に散兵戦術を習熟している必要があります。今回展示する『散兵教練書』は、そのための訓練に用いられました。

この教練書のほかにも『生兵教練書』『小隊教練書』『大隊教練書』が出版されており、これらはオランダの歩兵教練書(1857年版)を訳し4冊に分けて編集したものです。藩校萩明倫館の練兵場である「長門練兵場」から、慶応元年(1865)~2年頃に出版されたと推定されます。

各教練の学習過程は、下等兵士、中等兵士が生兵・小隊・大隊・砲兵砲隊教練や教養科目を学び、これらを修了した上等兵士段階で散兵教練などを学ぶこととなっていました。

関連資料

書名 著者名 出版者 出版年 請求記号
散兵教練書 [1866] Y396/A
生兵教練書 第一科伝書第一等 [1866] Y396/A
小隊教練書 第一科伝書第二等 [1866] Y396/A
大隊教練書 第一科伝書第三等 [1866] Y396/A
砲隊教練 初編 巻一 [1866] Y396/A
砲兵教練 初編 上 [1866] Y396/A
長門練兵場蔵板 活板散兵教練書 三宅紹宣∥著 [山口県] 2008.3 Y396/N 8
幕長戦争 三宅紹宣∥著 吉川弘文館 2013.3 Y215.8/P 3
長州戦争 野口武彦∥著 中央公論新社 2006.3 Y215.8/N 6
新説戦乱の日本史 42 小学館 2008.12 Y215.8/N 8
高杉晋作と長州藩 双葉社 2009.5 Y215.8/N 9
山口県史 史料編 幕末維新4 山口県∥編集 山口県 2010.3 Y211/M 6
山口県史 史料編 幕末維新6 山口県∥編 山口県 2001.06 Y211/M 6
長州戦争と徳川将軍 久住真也∥著 岩田書院 2005.10 Y215.8/N 5
幕末長州藩の攘夷戦争 古川薫∥著 中央公論社 1996.01 Y215.8/M 6
大村益次郎 糸屋寿雄∥著 中央公論社 1977 Y289/O 64
幕末期長州藩洋学史の研究 小川亜弥子∥著 思文閣出版 1998.2 Y402/M 8
長州奇兵隊 古川薫∥著 創元社 1972. Y215.8/K 2
長州奇兵隊 一坂太郎∥著 中央公論新社 2002.10 Y215.8/N 2
長州諸隊 上巻 高野義祐∥著 山口民報社 1977 Y215.8/K 7
長州諸隊 下巻 高野義祐∥著 山口民報社 1977 Y215.8/K 7
高杉晋作と奇兵隊 田中彰∥著 岩波書店 1985.10 Y216.1/L 5
長府藩報国隊史 徳見光三 マツノ書店 1998.06 Y215.8/M 8
浦滋之助日記 柳井市立柳井図書館∥編集 柳井市立柳井図書館 1992.03 Y215.8/M 2
浜田城炎(も)ゆ 小寺雅夫∥著 渓水社 2008.8 Y215.8/N 8
長州戦争と広島 広島市未来都市創造財団広島城∥編 広島市未来都市創造財団広島城 2013.12 Y215.8/P 3
近世藩校に於ける出版書の研究 笠井助治∥著 吉川弘文館 1962 R027.1/J 2
史都 萩(合冊) 1号~50号(p75-78 田中誠「目で見る明倫館(6)」) 史都萩を愛する会∥編 史都萩を愛する会 1987. Y274/J 7
洋学史事典 日蘭学会∥編 雄松堂出版 1984 R402.105/L 4

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