吉川経幹（改訂版）（明治維新人物調べ方案内 No.4）

人物紹介

吉川経幹（キッカワ・ツネマサ）

文政12年（1829）～慶応3年（1867） 

諱：章貞・経幹、字：貞甫、幼名：亀之進、通称：監物・駿河守、雅号：南陽・習静楼主人、法名：有恪院殿春山玄静、諡：有恪公

幕末の長州（萩）藩の支藩、第12代岩国領主。文政12年（1829）9月3日、第11代領主経章の長男として、岩国の仙鳥館で誕生。弘化元年（1844）に家督を相続。関ヶ原の戦い以降、家格問題で数代にわたって疎遠であった毛利宗家との融和協調に努める。

弘化4年（1847）に藩校養老館を開校して人材育成に力を入れ、種痘を領内に広める等、積極的に新たな政策に取り組み、また吉川家譜の編纂にも着手する。

元治元年（1864）の禁門の変（蛤御門の変）後、宗藩に恭順を説き、謝罪を周旋したことにより、第一次長州征伐の開戦を免れ、萩藩主毛利敬親、元徳父子を危機から救う。その後、二度目の開戦を想定し、武備恭順に政策を転換。家兵の訓練や民兵団の養成を行って開戦に備え、慶応2年（1866）の第二次長州征伐（四境戦争）では、征長軍が最大の兵力を集中させた芸州口に岩国藩兵を出撃させ、征長軍の進軍を阻む。

慶応3年（1867）3月20日に病死するが、その死は公表されず、毛利敬親の働きかけにより、慶応4年（明治元年）（1868）に従五位下駿河守に任じられ、城主格（初代岩国藩主）となる。経幹の隠居願と経健の家督願が許可された後、明治2年（1869）3月20日に喪が発表される。 明治24年（1891）追贈従三位。

資料紹介

伝記

『吉川経幹』（桂芳樹，吉川重喜，1969，請求記号：Y289/KI22）

発行者の吉川重喜氏は吉川家31代当主であり、吉川家による公式な伝記といえる。写真あり。

『岩国市史』通史編二 近世（岩国市史編さん委員会編，岩国市，2014，請求記号：Y233/N 1）

第2編「岩国藩の政治」ｐ274～282に経幹についての記載あり。また第４編「幕末期の政局」ｐ419～487にペリー来航から四境戦争までの周辺の情勢と経幹の動向の記載あり。藩校養老館については第9編「文化」のｐ1602～1608。吉川氏系図、岩国藩歴代藩主一覧、写真等あり。

『英智の三藩主』（藤井淳史 著，吉川報效会，2014，請求記号：Y288/P 4）

3藩主(初代広家・3代広嘉・12代経幹)について時代背景を交えて詳細に記してある。平成24年（2012）の吉川史料館特別展「岩国を築いた英智の三藩主展」の開催時に、地方紙に連載されていた記事をまとめたもの。経幹の記事はｐ97より。カラー写真あり。

同展パンフレット:「岩国を築いた英智の三藩主展」（吉川史料館，2012，請求記号：Y289/Ki22）

『マンガ岩国人物伝 Vol.2 吉川経幹伝』（近藤崇 漫画，藤井康弘 原作･編集，松岡智訓 監修，岩国徴古館，2017， 請求記号：Y289/Ki22）

経幹の生涯について、漫画と解説で分かりやすく紹介してある。カラー写真、図版あり。

『きらり山口人物伝 Vol.9 夢チャレンジ』（夢チャレンジ出版事業刊行委員会 制作，山口県ひとづくり財団，2016，請求記号：Y280/N 7）

小学生に向けて行われた授業をまとめたもの。経幹についての記載はp13～29。振り仮名があり、読みやすい。カラー写真、吉川経幹年表あり。

史料

『吉川経幹周旋記』全6巻（吉川経幹 著，日本史籍協会 編，東京大学出版会，1985，請求記号：Y289/KI22）

嘉永6年（1855）から明治元年（1868）の期間における、経幹が萩藩主敬親を助けるために周旋した顛末を記した記録集。全26巻の原本を明治15年に6冊にして刊行したものの復刻。解題あり。

著作

『習静楼遺稿 全』（吉川経幹 吉川経健 編，1900，請求記号：R919.5/D 0）

経幹の残した詩を編纂した詩集。安政3年（1856）に毛利敬親に招待された茶会の印象を書いた「江風山月書楼の記」も収録されている。

その他

吉川史料館

山口県岩国市横山にある吉川家の歴史史料館。館報に展示目録あり。

館報：『吉川史料館たより』（吉川史料館，請求記号：Y069/N 1）

『吉川家史梗概』（吉川家編纂所 編，1935）

岩国移封までの吉川家代々の歴史と岩国藩の概要、幕末期の動向についての概説。原本は山口県文書館に所蔵。国立国会図書館デジタルコレクションでも閲覧可能。

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